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小説執筆ツールを選ぶときの「ローカルファースト」という視点

クラウド前提の執筆ツールが抱えるリスク

近年の執筆ツールの多くは、常時インターネットに接続してクラウド上にデータを保存する前提で作られています。複数端末での同期が簡単な一方、サービスが終了したり通信環境が悪かったりすると、執筆そのものに支障が出てしまうこともあります。新幹線での移動中や、電波の弱い場所での執筆時に「保存できません」という表示に遭遇した経験がある方も多いのではないでしょうか。

クラウド前提のツールが抱えるもう一つのリスクは、サービス提供者側の事情に執筆環境が左右されてしまう点です。運営方針の変更や、最悪の場合はサービス終了によって、書きためた原稿へのアクセスそのものが失われる可能性はゼロではありません。長期間かけて書き上げる小説にとって、これは軽視できないリスクです。

「ローカルファースト」という考え方

「ローカルファースト」は、データをまずお使いの端末内に保存し、クラウドはあくまで任意のオプションとして扱う考え方です。オフラインでも執筆や閲覧が中断されず、アカウント登録なしにすぐ書き始められるのが特徴です。データの正本(マスター)が自分の端末にあるという安心感は、長編を書き続けるうえで思った以上に精神的な支えになります。

ローカルファーストという考え方は、なにもクラウドを否定するものではありません。あくまで「主導権がどちらにあるか」の違いです。クラウド前提のツールではサーバー側のデータが正本であり端末はその窓口にすぎませんが、ローカルファーストなツールでは端末側のデータが正本であり、クラウドは正本のコピーを安全に運ぶための手段として位置づけられます。

通信障害が起きたときの違い

この違いが実感しやすいのは、通信障害が起きたときです。クラウド前提のツールでは、保存や読み込みそのものがブロックされ、執筆が完全に止まってしまうことがあります。一方ローカルファーストのツールであれば、通信が復旧するまでは普段どおりローカルに保存を続け、あとから同期が追いつくのを待てばよいだけです。

複数端末で使いたいときはどうするか

もちろん、複数のパソコンやスマートフォンで同じ作品を編集したい場合には、クラウド同期が便利です。外出先のスマートフォンで思いついたシーンを書き足し、帰宅後にパソコンで続きを書く、といった使い方は、同期機能があってこそ実現できます。ローカルファーストなツールでも、必要なときだけアカウントを作成して同期を有効にできれば、両方の利点を活かせます。

ツールを選ぶときのチェックポイント

ツールを選ぶ際は、「オフラインで何ができて、何ができないか」を事前に確認しておくことをおすすめします。閲覧だけはオフラインでもできるが編集はできない、というツールもあれば、編集まで含めて完全にオフラインで完結するツールもあり、この違いは実際に使ってみるまで気づきにくいポイントです。

端末の紛失や故障に備えるという観点では、ローカルファーストであっても定期的なバックアップは欠かせません。データが端末内にしかない状態は、クラウドに預けきりの状態とは違うリスク、つまり端末そのものを失うリスクを抱えることになります。

モノ書きでの使い方

モノ書きは、会員登録なしですぐに執筆を始められるように設計されています。複数端末での利用が必要になったときだけ、アカウントを作成してクラウド同期を有効にする、という使い方を想定しています。

また、クラウドに依存しない分、定期的なバックアップ(JSONエクスポート)を習慣にしておくと、より安心して長期の執筆に取り組めます。書き上げた区切りのタイミングでエクスポートしておくファイルは、万が一の際の保険であると同時に、原稿の成長を振り返る記録としても役立ちます。