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『竹取物語』第1回:光る竹から生まれたかぐや姫

このシリーズについて

このシリーズでは、「かぐや姫」の原典として知られる『竹取物語』を、冒頭から結末まで6回に分けて詳しく読み解いていきます。第1回にあたる今回は、竹取の翁が光る竹の中にかぐや姫を見つけ、わずか3か月で成人の女性へと育て上げるまでの前半部分を扱います。既存の記事「『竹取物語』はどんな話?かぐや姫のあらすじと物語の型を解説」が全体を手短にまとめた入門編だとすれば、このシリーズはそこからさらに踏み込み、場面ごとの描写や細部まで丁寧に辿っていく詳細版という位置づけです。

『竹取物語』は作者不詳のまま平安時代前期(9世紀末〜10世紀初頭頃)に成立したとされ、著作権はすでに消滅しているパブリックドメイン作品です。原文は当時の仮名文で書かれていますが、このシリーズでは現代の読者にも読みやすいよう、内容を分かりやすい現代語で紹介していきます。

竹取の翁、光る竹に出会う

物語は《今は昔、竹取の翁といふ者ありけり》という一文から始まります。この翁の名は讃岐造(さぬきのみやつこ)といい、野や山に分け入っては竹を取り、籠やざるなど様々な道具を作って暮らしを立てる、どこにでもいそうな竹細工職人でした。

ある日、翁がいつものように竹林に入ると、その中に一本、根元が光る竹を見つけます。不思議に思って近寄ってみると、竹の筒の中がほのかに光っており、その中にわずか三寸(現在の単位でおよそ9センチメートル)ほどの、たいそう美しい人が座っていました。翁は「私が毎朝毎晩見ている竹の中にいらっしゃるのだから、この方はきっと私の子になるべき人なのだろう」と考え、その小さな姫を両手のひらにそっと乗せて家に持ち帰り、妻の嫗(おうな)に預けて育てさせることにします。

「なよ竹のかぐや姫」と名付けられる

この子はたいへん可愛らしく、まだ幼いうちは籠の中に入れて大切に育てられました。翁夫婦には実の子がいなかったため、この不思議な授かりものを心から愛おしみ、我が子同然に慈しんで育てていきます。

子がある程度の大きさに育つと、御室戸斎部(みむろどいんべ)の秋田という人物を呼んで名前を付けさせます。秋田は「なよ竹のかぐや姫」と名付けました。「なよ竹」はしなやかな竹を指す言葉で、「かぐや」は光り輝くさまを表すといわれています。竹から生まれ、光とともに現れたこの姫にふさわしい、美しい響きの名前です。

わずか三月で成人する、尋常ならざる成長

かぐや姫は、翁夫婦のもとですくすくと育っていきますが、その成長の速さは尋常ではありませんでした。物語では《三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば》と語られており、人間であればおよそ十数年かかる成長を、かぐや姫はわずか3か月ほどで遂げてしまいます。

一人前の大きさに育つと、当時の風習に従って髪上げ(成人の女性らしく髪を結い上げる儀式)や裳着(もぎ、成人女性の正装である裳を初めて身につける儀式)が行われ、かぐや姫は正式に大人の女性として扱われるようになります。以後は几帳(きちょう、室内に立てる間仕切り用の調度)の内側からほとんど出すことなく、大切に大切に育てられていきました。

この姫の容姿の美しさは並外れたもので、家の中には暗い場所がないほど光に満ちていたと表現されています。翁は気分がすぐれず苦しいときでも、この子の顔を見ればつらさが和らぎ、腹立たしいことがあっても心が慰められたといいます。小さな光る竹から始まった出来事が、翁夫婦の人生そのものを明るく照らしていく様子が、物語の冒頭から丁寧に描かれています。

竹の中の黄金、裕福になっていく翁夫婦

かぐや姫を見つけて以降、翁が竹を取りに行くと、節と節の間に黄金が入っている竹を見つけることが度々あるようになります。このことがきっかけで、翁の家はしだいに裕福になっていき、《勢ひ猛の者》つまり羽振りの良い有力者へと変わっていきました。竹取りという素朴な生業を営んでいたひとりの老人が、かぐや姫という不思議な授かりものをきっかけに、生活そのものを大きく好転させていく——この黄金のエピソードは、かぐや姫が単なる美しい娘というだけでなく、翁夫婦にとって文字通りの「福」をもたらす特別な存在であったことを物語る挿話になっています。

国中に広まる美しさの評判、求婚者たちの気配

かぐや姫の成人を祝う宴では、三日間にわたって盛大な催しが開かれ、身分の上下を問わず多くの男性が呼び集められて賑やかに遊び興じたと伝えられています。この宴をきっかけに、かぐや姫の美しさの評判は瞬く間に世間に広まっていきます。

物語は《世界の男、あてなるも賤しきも、いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがなと、音に聞きめでて惑ふ》と語っています。身分の高い者も低い者も、国中の男たちがこぞって「なんとかしてかぐや姫を妻に迎えたい、せめて一目でいいから姿を見たい」と恋い焦がれ、心を乱していったというのです。翁の家の周りに集まり、垣根越しや門の隙間からでも姿を覗き見ようとする者が後を絶ちませんでしたが、かぐや姫は堅く守られた屋敷の奥深くにいるため、誰ひとりとしてその姿を見ることすらできません。それでも求婚の意志を曲げない男たちは夜も昼も翁の家に通い続け、やがてその中から特に熱心な五人の貴公子だけが、最後まで諦めずに言い寄り続けることになります。

次回は、この五人の貴公子たちがかぐや姫に挑むことになる、無理難題の数々を詳しく見ていきます。

参考文献

室伏信助(訳注)『新版 竹取物語―現代語訳付き』角川ソフィア文庫、2001年

角川書店(編)『竹取物語(全)』角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典、2001年

Japanese Text Initiative, University of Virginia Library「竹取物語 Taketori monogatari」: https://jti.lib.virginia.edu/japanese/taketori/

The Ohio State University「竹取物語 Taketori Monogatari」: https://cjp.asc.ohio-state.edu/books/taketori-monogatari/about