『竹取物語』第4回:帝の求婚にも靡かないかぐや姫
帝、かぐや姫の噂を聞く
五人の貴公子による求婚がことごとく失敗に終わったという噂は、やがて時の帝(みかど)の耳にも届きます。国の頂点に立つ帝は、内侍(ないし、宮中に仕える女官)の中臣房子(なかとみのふさこ)を翁の家へ遣わし、かぐや姫の様子を見てくるよう命じます。
しかしかぐや姫は、帝からの使いであっても会おうとはしません。房子が「帝の仰せ事を背くのか」と説得を試みても、かぐや姫は「私は帝にお仕えする身分の者ではございません」ときっぱりと拒み、結局、房子はかぐや姫の姿を見ることすらできないまま、むなしく宮中へ帰ることになります。地上で最も高貴な存在である帝の使者であっても、かぐや姫の態度はまったく変わらないという事実が、この場面を通して読者に強く印象づけられます。
自ら狩りに出て対面を試みる帝
使者をもってしても埒が明かないと悟った帝は、一計を案じます。狩りに出かけるという名目で自ら翁の家へ赴き、不意打ちのようにかぐや姫との対面を果たそうとしたのです。翁の家に立ち寄った帝は、光り輝くばかりに美しいかぐや姫の姿をついに目にし、たちまち心を奪われてしまいます。
帝はかぐや姫の手を取り、ともに宮中へ連れて行こうとしますが、かぐや姫は「私をこのまま連れていかれるのであれば、私はこの身を消えてなくしてしまいます」と告げます。実際にかぐや姫の体はその場でふっと影のようになり、姿が薄れていきます。驚いた帝はやむなく連れて行くことを諦め、せめてもと、かぐや姫と和歌を詠み交わしたのちに、名残惜しい思いを抱えたまま宮中へと帰っていきました。
かぐや姫、なおも靡かず
力ずくで連れ去ることすらできなかった帝は、以後もかぐや姫への思いを断ち切れず、三年ほどの長きにわたって、文(ふみ、手紙)を送り続けます。かぐや姫もまた、帝からの文には折々に返事をしたため、互いの心のやり取り自体は続けられていきます。
しかし、どれほど心のこもった文が重ねられても、かぐや姫が帝のもとへ嫁ぐことはありませんでした。五人の貴公子たちは無理難題によって退けられましたが、帝に対しては難題を課すようなことはせず、ただ静かに、しかし決して揺らぐことのない態度で求婚を拒み続けます。この国でもっとも強大な力を持つ帝でさえも、かぐや姫の心を動かすことはできなかったという事実は、かぐや姫がそもそもこの世の身分や権力の物差しでは測れない存在であることを、物語の中でもっとも端的に示す挿話になっています。
繰り返される求婚と、静かに積み重なる伏線
かぐや姫が地上のどのような高い身分の者にも靡かないという事実は、五人の貴公子の挿話、そしてこの帝の求婚の挿話と、二重に積み重ねられることで、読者の中に強く刻み込まれていきます。この時点ではまだ、なぜかぐや姫がこれほどまでに結婚を拒み続けるのか、その理由は明らかにされていません。
次回、物語はいよいよ終盤へと向かいます。かぐや姫がなぜ誰とも結ばれようとしなかったのか、その理由が、ついにかぐや姫自身の口から明かされることになります。
参考文献
室伏信助(訳注)『新版 竹取物語―現代語訳付き』角川ソフィア文庫、2001年
角川書店(編)『竹取物語(全)』角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典、2001年
Japanese Text Initiative, University of Virginia Library「竹取物語 Taketori monogatari」: https://jti.lib.virginia.edu/japanese/taketori/
The Ohio State University「竹取物語 Taketori Monogatari」: https://cjp.asc.ohio-state.edu/books/taketori-monogatari/about